海外オーケストラのオーディションってどんなもん? ~ 気になる募集要項と内容について ~

Pocket

ヴァイオリンで生計を立てる人にとって、なりたい目標って何でしょう?
ひとつの目標がオーケストラプレーヤーだとして、狭き門であるのはどの世界でも同じ。
いわゆる一般のビジネス社会で入社試験があるように、オーケストラには大体オーディションが存在します。絶対的な審査基準が有るのか無いのか分からないまま、及第点では合格できない厳しい世界であることは事実だし、通ったからって終身で身分が保証されている訳でもない、そんな血と汗と涙の結晶、芸術の世界の入口へヨウコソ。

1. 海外のオーケストラのオーディションまとめサイト

海外のオーケストラのオーディション情報ってまとめたものが有るのかしら?と思って探してみると、日本のオーケストラは存在するのですが、Googleで見る限り無いのですね。。。

公益社団法人日本オーケストラ連盟
http://www.orchestra.or.jp/audition/

ちなみに、ざっと海外の有名オーケストラのオーディション情報を集めてみても、そもそもオーディションをネット上に公表していないオーケストラも多々あります(ウィーンフィルとかベルリンフィルとか)。それでもなんかあるだろう?と思い日本人にとって聞いたことがあるであろう海外有名どころのオーディション情報を集めてみました!というのがこのコンテンツになります。

2. その前にオーディションて何をするの?

オーディションってどんなのやるの?という点については日本のオケとあまり変わらないのかな?という気がしますが、例えばサンフランシスコ交響楽団では現在アシスタントコンサートマスターを募集しています(2017年10月22日現在)。

募集要項は以下。

***ここから***

*Excerpts listed in bold will be sent to invited candidates only*
(下記太字の抜粋リストは招待された候補者のみに送られます)

Solo Repertoire (piano accompaniment will be provided):
(ソロレパートリー(ピアノ伴奏つき))

1. Mozart Concerto No. 4
1st Mvmt: beginning to bar 208
(モーツァルトVn協奏曲第4番第1楽章:最初から208小節目まで)
AND(あ~んど)
2. Romantic concerto, choice of one of the following, first movement:
(ロマン派Vn協奏曲の第1楽章から下記ひとつを選択)

Beethoven(べとべん)
Mendelssohn(めんこん)
Bartók Concerto No. 2(バルトーク2番)
Brahms(ぶらーむちゅ)
Sibelius(しべこん)
Prokofiev Concerto No. 2(プロ子2番)
Glazunov(グラズノフ)
Tchaikovsky (チャイコン)

Orchestral Excerpts, 1st Violin Solo Passages:
(オーケストラの1st Vnソロパートから)

Brahms Symphony No. 1 2nd Mvmt: mm. 90 – 105
(ブラ1の第2楽章、テンポ90~105)
Gershwin Piano Concerto 2nd Mvmt: pickup to Reh. 7 to 8
(ガーシュウィンのピアコン第2楽章、練習番号7~8より)
Grofé Grand Canyon Suite 3. On the Trail: beginning to Reh. 1
(グロフェのグランドキャニオン組曲”3.On the Trail”より最初から練習番号1まで)
Haydn Symphony No. 6, “Le Matin” 2nd Mvmt: mm. 18 – 104
4th Mvmt: mm. 56 – 84
(ハイドンの交響曲第6番” Le Matin”から第2楽章および第4楽章)
Rimsky-Korsakov Scheherazade All solo passages
(リムスキー=コルサコフのシェヘラザードよりソロ全編)
Shostakovich Symphony No. 5 1st Mvmt: 3 after Reh. 45 to end
(タコ5の第1楽章、練習番号45の3小節後から最後まで)
Stravinsky Apollon musagète Reh. 20 to 24
(ストラヴィンスキーのバレエ音楽”ミューズを率いたアポロ”より練習番号20から24まで)
Strauss Le bourgeois gentilhomme 4th Mvmt: complete
(リヒャルト・シュトラウスの組曲”町人貴族”より第4楽章)

Orchestral Excerpts, 1st Violin:
(オーケストラパート1st Vnからまだまだあるよ~)

Beethoven Symphony No. 4 4th Mvmt: beginning to m. 231
(ベト4の第4楽章、最初から231小節目)
Brahms Symphony No. 4 4th Mvmt: complete
(ブラ4の第4楽章全部、マジ?)
Debussy La Mer Reh. 19 to 39
(ドビュッシーの“ラ・メール”より練習番号19から39まで)
Mahler Symphony No. 1 4th Mvmt: Reh. 15 to 19
(マラ1の第4楽章、練習番号15から19まで)
Mendelssohn Symphony No. 4, “Italian” 1st Mvmt: complete
(メンデルスゾーンのイタリアから第1楽章全部、くわっ・・・)
Mozart Symphony No. 39 4th Mvmt: beginning to m. 104
(モツ39の第4楽章、最初から104小節目まで)
Prokofiev Symphony No. 1, “Classical” 4th Mvmt: complete
(プロ子の古典交響曲から4楽章全部)
Schumann Symphony No. 2 Scherzo: complete
(シューマン2番のスケルツォ全部)
Schoenberg Chamber Symphony No. 1 Reh. 60 to 77 (Chamber Version)
(シェーンベルグの室内交響曲第1番より練習番号60から77番、管弦曲版)
Stravinsky Apollon musagète Coda: Reh. 71 to 86
(ストラヴィンスキーの”ミューズを率いたアポロ”コーダより練習番号71から86まで)
Strauss Don Juan Complete
(R.シュトラウスのドン・ファンより全部)

Sight reading may also be required
(初見演奏も必要になると思いますぜ)
The official pitch of the San Francisco Symphony is A=441
(当団のオフィシャルピッチはA=441です)

***ここまで***

くわ~~~~~。
超大変。初見とかムリじゃね。なーんていう関門をサラッと通過していくようでなければ耳の肥えた聴衆を満足させられない訳で、むしろ「楽しくなってきたぜ」というくらいであってほしい訳ですが、それにしてもボリューミー、かつアメリカのオケっぽい選考内容ですね。

もちろんコンサートマスターや首席奏者に課せられるオーディション内容と、Tutti(一般団員)に対するオーディション内容は異なります。とは言え、厳しさには変わりは無い訳で、大変さがよくわかります。

3.オーディションのまとめ

(北米)

シカゴ交響楽団(The Chicago Symphony Orchestra)

クリーヴランド管弦楽団(The Cleveland Orchestra)

ニューヨーク・フィルハーモニック(New York Philharmonic)

ボストン交響楽団(The Boston Symphony Orchestra)

フィラデルフィア管弦楽団(The Philadelphia Orchestra)

ロサンジェルス・フィルハーモニック(Los Angeles Philharmonic)

サンフランシスコ交響楽団(San Francisco Symphony)

(ヨーロッパ)

王立コンセルトヘボウ管弦楽団(Koninklijk Concertgebouworkest)

バイエルン放送交響楽団(Bavarian Radio Symphony Orchestra)

ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団(Gewandhausorchester Leipzig)

チェコ・フィルハーモニー管弦楽団(Česká filharmonie)

スイス・ロマンド管弦楽団(Orchestre de la Suisse Romande)

と、ココまで調べてみましたが、意外と掲載されていないのが実態。
勿論上記のサイト見てみてもわかりますがヴァイオリンの募集は世界を見てみてもそれほど多い訳ではない、と言うところへ世界中から奏者が集中するゆえに狭き門、と言えるのでしょうね。
と同時に、受け入れる側としても、演奏技術だけでなく人間性や協調性を見たい、ということからオーディションもするけれども、広く一般から受け付けるのではなく、推薦があって初めてオーディションに辿り着ける、なんてのも有るでしょう。

まぁ、別にそれって芸術の世界だけじゃなくて、一般ビジネスでもそうですけどね
例えば訪問販売のイメージで、ふら~っと立ち寄ったお客さんに商品をお勧めしたとして

「これスゲー良いから買ってみてよ!」

「おぉ!悪くないね。でも君のコトよく知らないからまた今度ね」

なんてお断りされるの、ごくごく普通のデキゴトですわねw、よく考えてみれば。

ってな感じでまた次回。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。