こんなオーケストラがあったらいいな② ~『エレクトリックオーケストラ(爆音オケ)編』

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『はじめに』

昨今クラシック音楽の低迷が嘆かれて久しい・・・という書きっぷりから、ゲームでオーケストラを作ってみたら面白いんちゃう?という流れで妄想してみた「オケつく編」は完全に妄想ですがw、そうやって発想を自由にしてみると、クラシック音楽ってものすごい制約条件がありまくると思いませんか?

・原典至上主義
・生音至上主義
・完璧至上主義
・精神性至上主義
・芸術性至上主義

他にもあるかもw。

『冒険してみた方々』

古典芸術であるが故の、歴史の重みがそうさせるのか、少しでも外れた路線は「あぁん?」「コイツはもう正統派じゃねぇ、魂を売りやがった」という視線で見てしまうワケです。例えばヴァイオリニストでいうと以下お三方が代表的かしら。

ナイジェル・ケネディ(Nigel Kennedy)、一時期のナージャ・サレルノ=ソネンバーグ(Nadja Salerno-Sonnenberg)、あとは最近出てきたネマニャ・ラドゥロヴィチ(Nemanja Radulović)・・・。

それこそ、一時期のピアソラブームとともにギドン・クレーメル(Gidon Kremer)イツァーク・パールマン(Itzhak Perlman)、あとはチェリストのヨー・ヨー・マあたりに対してまで「あれっ?」という視線が投げかけられたような記憶があるわけですよ・・・。

オーケストラでいったら、例えばボストン・ポップス・オーケストラ(Boston Pops Orchestra)なんかが有る訳ですよ。このボストン・ポップス・オーケストラなんて名門中の名門、ボストン交響楽団(Boston Symphony Orchestra)が夏のオフシーズンの間、音楽普及を目的としたポピュラーコンサートや音楽会で演奏するために編成を変えたもので、基本的なメンバーはボストン交響楽団と同じだし、そもそもこれって1885年から続いている伝統ってやつなのです。
作曲家ルロイ・アンダーソン(Leroy Anderson)を見出したり、あのスター・ウォーズなどの映画音楽を生み出したジョン・ウィリアムズ(John Towner Williams)が芸術監督を務めたりするなど、そりゃ名門中の名門が本気でポピュラー音楽や映画音楽を演奏しているゆえに、例えばブラスの音なんて炸裂したらそれこそ半端ない音がするのよ、コレが。

それでもなお「ふーん」という視線が有るのは否めない。

例えば、少し路線を変えてとあるヴァイオリニストが本気でメンデルスゾーンのヴァイオリンコンチェルトを弾き切って、そのあとにこんなアンコールを弾いたらどうでしょう?

当のご本人は、パガニーニ国際ヴァイオリン・コンクールで優勝し、超絶技巧を誇る現代のヴィルトーゾ、アレクサンダー・マルコフ(Alexander Markov)。ホンモノのヴァイオリニストですが、おとなしく着席してリスニングの姿勢を崩さない聴衆とのギャップに、この前段の縮図が現れているように思えちゃうのよね・・・。
最後はライトセーバーもどきまで出てきて一応の盛り上がりを見せますが。

 

『マーケティング論で分析してみる』

これって、結局はマーケティング理論でいうところのターゲティング(Targeting)を考えなくてはならないんじゃないか?と思うに至った動画でもあるのです。
ターゲティングはマーケティングにてよく使われるSTP分析の一部で、STPはそれぞれ「セグメンテーション」「ターゲティング」「ポジショニング」の頭文字から採ったもの。
STP分析では市場のニーズを満たす価値軸を設定して、自身の優位な位置付けを演出(ポジショニング)する自社商品(ここでいうなら自身の演奏)やサービスの市場における立ち位置を決めるもの。

これがパーティの会場であればこんな感じになります。
プログラムはだいたい同じ感じ。でも場が異なるというバージョン。

つまりここでのSTP分析でいうなら、こんな感じ。

セグメンテーション:ロックの要素を織り交ぜた正統派ヴァイオリニスト
ターゲティング:通常のクラシックに刺激を求める先端層
ポジショニング:競合他社(他者)は正統派クラシックヴァイオリニスト界では唯一無二

要はココでいうところのターゲティングで「通常のクラシックに刺激を求める先端層」が実際どれだけいるのか?という話。前段に立ち戻るけれどもクラシック愛好家は最先端のアヴァンギャルドなゾーンを良しとしない、むしろ嫌悪すら覚える世界であるとするならば、クラシックのコンサートホールで刺激的なコトをしてもマーケティング的にはダメなんじゃないか?という疑問です(自分はこの行為自体がダメと言っている訳ではないし、マーラーだってショスタコだって充分当時は最先端だったし刺激的だったと思うゆえ、こういった試みは大事、というスタンスです)。

話をどんどん横にそらしていくとw、このSTP分析をしたのちに、マーケティングミックスがカバーするマーケティングの4つの領域を見据えないとイカン、というのが世の一般的なセオリーです。

そこでマーケティングミックスってなんぞや?ってところがキモでして。
ようはこのミックスとやらを構成する「4P」を把握して活かそうぜ、って話なのです。

製品(戦略)- Product
流通 – Place
広告・宣伝・コミュニケーション – Promotion
価格 – Price

まぁ、当たり前っちゃアタリマエ~な要素です。
これが登場してから数十年も経っています。いろいろなマーケティングの本やマーケティングに関わる授業にもマーケティングミックスは必ず登場します。それほど有名なフレームワーク(考え方・視座)です。
多くのマーケターは当然、マーケティングミックスについて知っているでしょう。

例えば日本のとある一流オーケストラを4P分析すると、

製品:日本有数の高品質な演奏
流通:TV・ラジオと言った多様な媒体により幅広いターゲット層へ接点をもつ
広告・宣伝:基本的にマス戦略であり、売れ線商品(現代曲とか変な冒険余りしない)に絞り込んだ展開
価格:ボリュームゾーンに対して比較的高め

ってことになります。
業界環境の変化に追随するためにSTP分析を行い、かつ業界環境の要素を見極めるために3C分析(めんどくさいのでココでは割愛w)で「自社・競合・お客さま(市場)のいずれかが変化していること」を分析していく訳ですな。
そのうえでマーケティングミックスを策定していく。

そうしていくと一つの結論というか、矛盾点に行きつきます。
クラシックは広く一般に普遍的に広まって欲しいにもかかわらず、ピュアリズムというか純血主義というか、唯一無二を目指しながらも人と違うことを良しとしない、という風潮がある、というのは前段でご説明申し上げた通り。
すなわちレッドオーシャンの中でブルーオーシャンを探す作業なのか?ってコトになりませんか。

ちなみにレッドオーシャン、ブルーオーシャンってこういう意味(マーケティング講座みたいになってきたw)。

レッドオーシャン(赤い海):既存の製品やサービスを「改良」しながら、既存市場で勝負する、競争で生き抜くことで企業の存続が決まる
ブルーオーシャン(青い海):競争とは無縁に、既存の製品やサービスを「進化」させながら新規市場を創造するアプローチ

 

『飛び出してみたらシンフォニックメタルだった場合』

つまり、クラシックの枠組みのまま(クラシック界の住人)ではブルーオーシャンに出ることは許されない、ってこと。それなら、思い切ってクラシック界の住人から飛び出ませんか?というのがここでの趣旨。

かといってシンフォニックなロック、メタルといった要素は、既に10数年前から欧州を中心に広まっているし、そもそもロックバンドの伴奏的要素は否めません。
つまりは、4ピース、または5ピースのバンド編成ではカバーしきれない世界観をシンフォニックなサウンドで表現しようという試み。

Within Temptation – Paradise (What About Us?) ft. Tarja

欧州でシンフォニックメタルバンドとして大成功を納めたNightwishの元ヴォーカリスト、ターヤ・トゥルネンを迎えての1曲。

 

Walking On Water‐Trond Holter

数々のバンドを渡り歩いてきた稀代のヴォーカリスト、ヨルン・ランデ(Jørn Lande)とWigwamのギタリスト、ロンド・ホルター(Trond Holter)のプロジェクト。
アクションが聖飢魔Ⅱのデーモン閣下。

結局「シンフォニック」というだけあって、シンフォニックなワケでシンフォニーではないのですよ。

 

『ホントのブルーオーシャンに飛び出してみませんか』

クラシックな音楽、楽器をメインとしたものは何か無いんかい?と常々Youtubeを検索するわけですが、なかなか上質なものには出会えていないというのが実態。
つまりは、コレってブルーオーシャンなんじゃない?というのがコレ

エレクトリック楽器によるオーケストラ

「生音至上主義」
クラシック音楽って、経済原則的に儲からないように出来ていると思いませんか?
大きなホール、と言ってもせいぜい2000人が入るハコにオーケストラが70~80人出演。
これに裏方がいて演奏会を行う訳で、一人当たりの手取りは少ないし、CDは売れないし元々単価も安いし。これはあくまで最低限のお約束をお互いに守っているから、ですよね。つまりガチの生音勝負、「生音至上主義」。
それゆえにオーケストラの響きが重要視されるし、その補助としての楽器のグレード、ホールの良しあしが影響される。それであるがゆえに、演奏家は己の個人負担でサラリーマンの生涯収入を楽器にぶち込んだりする事態が発生する。
であるなら、そんな制約条件はキャンセルしてしまうツールを使ったらよいのでは?というのは危険な発想でしょうか・・・。
生音をマイクで拾う、という手段もありますが、巨大な会場で爆音勝負してしまうとハウリングを起こすリスクもあることから、ここはエレクトリックヴァイオリンを代表とする楽器をすべてエレクトリックにしてしまおう、というものです。

エフェクター等を活用すれば、そもそもオーケストラにヴァイオリニストが20~30名いる必要もなく、そもそもオーヴァードライブやディストーションで音を歪ませることを前提とするならば、逆に複数奏者いることで音像がぼやけるゆえ、そんなには要らないってことになるかも。
オマケに、ハイドンやモーツァルトのような古典の響きよりもショスタコービッチ、ストラヴィンスキーやバルトークといった、時として荒れ狂うサウンドを身上とする作曲家の魅力を引き出すようなオケになるのではないか??と思うのです。

もちろん、こういった純音楽のキリっと引き締まった音楽はこのままでとてつもなく美しいですけどね。

ショスタコービッチ交響曲第8番第3楽章

ムラヴィンスキー・・・しゅごい。

ってな感じでまた次回。

こんなオーケストラがあったらいいな② ~『エレクトリックオーケストラ(爆音オケ)編』” への1件のコメント

  1. […] ②『エレクトリックオーケストラ(爆音オケ)編』 ③『サマソニクラシック(オケフェス)編』 […]

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