【実は結構的を突いているかも!?】室内楽団はヴィオラで選ぶ!!の巻

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昨今CD屋自体は減ってきましたが、クラシックコーナーでも一角を占める室内楽の棚には有象無象の室内楽団が存在していて、どれを選んだらよいのか、ほんと悩みますよね。
探している曲目が有ればまだしも、それがメジャーレーベルとかでないとお値段もまぁまぁしちゃったりして「こ・・・これでエエんやろか」と二の足を踏んでいるうちに、あっという間に時は過ぎて、立っていると腰も痛くなってくるし、まぁこれにしちゃうか!とか言って買ってみたらモノラル録音のノイズだらけのボロい録音だったりして泣いちゃいますよね・・・。

素晴らしい室内楽団、って世に星の数だけある団体の中のほんの一握り。
もちろんどれもが素晴らしいし、人の好みにもよるので一概にはこれがベスト、なんて言える訳もなく、ではあるんですが、やっぱりこの演奏ステキだなぁ、って思うに至る共通する何かがないか?ってのはいつも考えるんです。

そこでふと、録音よりも、ホールでの演奏を聴く時に分かりやすいのですが、各楽器が一体感を持っている演奏なのか、はたまた各個人が強烈に主張しまくっている演奏なのか、ってこと。自分は前者が好きなので、一体感を持った音楽となるために必須の要素ってなんだろう?と思うとすぐに分かるのがヴィオラの存在感なんですよね

ヴィオラの音がステキだなぁ、全体を包むような響きで豊かで温かくて、それでいながらしっかり主張していて・・・なんて演奏であれば、間違いなくその日の演奏は素晴らしいにちがいない、と言えるくらい、各団体におけるヴィオラの存在感は重要です。

どんなにヴァイオリンが、チェロが名演を繰り広げていても、しょせんとあるフレーズにおける個人プレーみたいなもので、その他の大多数のフレーズをアンサンブルで作り上げていくのが最も大事なこと。それをなしえるのがヴィオラなんですね。ヴァイオリンとチェロをつなぐ、というか全体の響きや方向性を作り出す司令塔のような、そんな存在です。

ヴィオラにもソリストというのは古くから存在していて、エクトル・ベルリオーズの『イタリアのハロルド』(Harold en Italie)やパウル・ヒンデミットのヴィオラ協奏曲には数々の有名ソリストが登場します。

 

『ソリスト系統』

①ウィリアム・プリムローズ(William Primrose, 1904年‐1982年)
イザイの弟子であり彼の勧めでヴィオラに転向。ヴィオリストのパイオニア、ですね。

②ヨゼフ・スーク(Josef Suk、1929年– 2011年)
ヴァイオリニストとしても世界最高なのに、ヴィオリスととしても世界最高その1。
派手なことは一切しないけれど、それがかえって華があるように思えるステキな演奏家。

③今井 信子(いまい のぶこ、1943年‐)
日本が誇る世界最高のヴィオリストのひとり、ということになっている。

④ピンカス・ズーカーマン(Pinchas Zukerman、1948年‐)
ヴァイオリニストとしても世界最高なのに、ヴィオリスととしても世界最高その2。
個人的にはユーリ・バシュメットよりもこの人のヴィオラの音が好き。

⑤キム・カシュカシャン(Kim Kashkashian, 1952年‐ )
バルトークのヴィオラ協奏曲とか強烈ですよね。ホントこの音は女性のヴィオラ?
というくらいに力強く、それでいてあまり金属的にならない。

⑥ユーリー・バシュメット(Yurii Bashmet, 1953年‐)
現代最高のヴィオラ奏者と言われるユーリ・バシュメット。
この人の『イタリアのハロルド』を聴きに言った覚えがある。

⑥タベア・ツィンマーマン(Tabea Zimmermann, 1966年‐)
アルカント弦楽四重奏団(Arcanto Quartet)のメンバーでもあります。
ソリスト系統にカテゴライズするのもどうかと思いますが、ソリストとしても一線級。

⑦アントワーヌ・タメスティ(Antoine Tamestit, 1979年‐)
2004年ミュンヘン国際コンクール優勝の名手。ここまで来ると異次元。

でも、ここで取り上げたいのはソリスト、じゃないんです。
むしろ目立たない、オケマン(オーケストラのプレーヤー)であったり、カルテットのメンバーであったり。むしろ、そんなところに名手がゴロゴロいたりするのですよ。

 

『アンサンブル系統』

①ピーター・シドロフ(Peter Schidlof, 1922年 –1987年)
アマデウス弦楽四重奏団のヴィオラ奏者。
彼が逝去したことでカルテット自体も解散を余儀なくされています。
興に乗ってきた時の彼の演奏は、カルテットをさらに乗せていくような弾き込み、
歌い込みをするので、現代的な精緻な演奏とはタイプの異なる奏者ではあります。
それにしてもステキな響きで包み込むのです。

②ミラン・シュカンパ(Milan Škampa, 1928年-)
スメタナ弦楽四重奏団のヴィオラ奏者。
ピーター・シドロフとは異なるタイプですが、彼もまためちゃくちゃ上手い。
安定した音色と響きがスメタナ四重奏団を形作っていたんではないか?と思う今日この頃。
ヨゼフ・スークがちょこちょこ参加してはモーツァルトの弦楽5重奏を録音しましたが、
どれもこれも絶品の仕上がり。

③トーマス・カクシュカ(Thomas Kakuska, 1940年‐2005年)
アルバンベルク弦楽四重奏団のヴィオラ奏者。
彼の逝去が現代最高峰のABQを活動停止に追い込んだと言っても過言ではないほど、やはりアンサンブルの名手であり、繋ぎ役であったのですね。

④店村 眞積(たなむら まづみ、1948年‐)
思うに日本人ってヴァイオリニストよりもヴィオリストの方が向いているんじゃないか?って思うくらいに、名手が多い。
その中でもここまで歌っちゃうんだ、という位に豊かな響きと音色で厚みを持たせてきたのが店村さんのヴィオラ。素直に凄いです。

⑤ヴォルフラム・クリスト(Wolfram Christ, 1955年‐)
ヴィオラはかくあるべし、を地で行くヴィオラ奏者の鏡。
ベルリンフィルの首席を1978年~1999年の間務めた名手です。
退団直前の演奏会を聴きに行きましたが、骨太でがっしり、とか、スケールが大きい、
という次元を超えた、ホール全体の響きであったり、音楽の向かうところを指し示す
ような、そんなスゴイ奏者なのです。

こんな奏者(名手)が参加している演奏はきっとステキですよ。
というところで、また次回。

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