【木材図鑑】ペルナンブーコ(Pernambuco)の代替になりえる候補たち

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ここ最近はヴァイオリンの弓材に使われるペルナンブーコについて投稿。

→ 【木材図鑑】弓に使われる前は染料だったペルナンブーコ(Pernambuco)
→ 【木材図鑑】切られまくったペルナンブーコ(Pernambuco)

18世紀にフランソワ・トルテが「ペルナンブーコは弓材に最適!」と見つけてから200年経ちましたが、今や絶滅危惧種にまで指定される有様。

“過度の伐採により絶滅の恐れがあるため、IUCNに絶滅危惧種として登録されてしまったり、また2007年6月にハーグで開かれたワシントン条約締約国会議においてペルナンブーコを含むブラジルボクは同条約附属書IIに記載されることになってしまいました。”

おさらいをすると。
1)ペルナンブーコはペルナンブーコ州で採れるブラジルボク、パウ・ブラジルのこと。
2)ちなみにパウ・ブラジルは「燃えるように赤い木」という意味になり芯材は染料に使われていた。
3)国号のブラジルは樹木のパウ・ブラジルが盛んにポルトガルへの輸出されたことに由来。
4)染料用途は化学染料に代替されたが楽器用(弓材用)にフランソワ・トルテが適材であることを発見。
5)音響特性、加工適正から代替材が見つからず現代に至る。
6)染料、工芸用の伐採、都市開発等で500年前から比べて90%が喪失。
7)遂にはワシントン条約(CITES)にて付属書IIに記載され保護の対象に。

もうこうなると人々は幾つかの限られた選択肢に走ります。

a)意地でもペルナンブーコにこだわり、大量にストックロットを保管
b)代替材を見つけるべく探索に走る
c)技術の発展とともに時代の最先端を行く技術で代用する

大体こんなもんでしょうか。
他にもあったら検証してみたいですけれど。

 

a)意地でもペルナンブーコにこだわり、大量にストックロットを保管

このワシントン条約をよく読んでみると伐採の禁止と言うよりもトレードの制限に主眼があるように読むことが出来ます。即ち輸出入制限をすることで伐採量を制限しようとする動きですね。

経済産業省のHPには以下が記載されています。

“附属書に掲載された種の動物や植物を使用した貨物の輸出入に関しては、事前に承認・許可をとらなければ輸出入ができません。輸出の場合には、当省にて発行する輸出承認書及びCIETS輸出許可・再輸出証明書が必要となります。輸入の場合には、輸出国にて輸出許可が必要です。さらに条件によって、輸入国である日本でも事前に手続きが必要な場合があります。”

許可を取ればいいんでしょ、というようにも読めなくもないですが、おそらくはこの許可ってやつが有名無実化するくらい「許可」ではないのでしょうね(厳しいのでしょうね)。

さらにはこんなパラグラフも。

“条約規制対象となる動物や植物そのものだけでなく、対象の種が一部でも含まれていれば、加工品であっても輸出入の際に手続きが必要です。また、新品か中古かは問題とならず、一部でも含まれていれば手続きが必要です。対象種の原材料を輸入して国内で製造した製品だけでなく、製品の状態で輸入したものを再度海外へ輸出する場合も規制対象となります。(例:原材料を輸入しギターや化粧品に加工して輸出する場合だけでなく、製品の状態で海外から輸入して、更に海外に輸出する場合)”

従って、大量にストックロットを日本国内で手配するのはともかくとして、海外で手配するのは相当大変なのでは?ということが容易に想像できます。

 

b)代替材を見つけるべく探索に走る

ペルナンブーコの代替材として考えられるのは現在3種類の木材と言われています。

1)マニルカラ or マサランデューバ(アマゾンジャラ)

所謂ウッドデッキ材等に使われる堅木です。
樹種名:マニルカラまたはマサランデューバ
別名 :アマゾンジャラ 
樹種 :アカテツ科
比重 :1.06

2)スネークウッド

南米産のクワ科の木材で、材に見られる斑紋が蛇(snake)の鱗のようであることに由来し、また模様が象形文字文字にも似ていることから別名「豹麗木」「レターウッド(Letterwood)」「レパードウッド(Leopardwood)」とも呼ばれる世界最高峰の銘木材です。材は極めて重硬で緻密な材の為、加工や乾燥が困難です(要はメチャクチャ硬いし割れやすい)。
分布については、ブラジルのアマゾン川流域からガイアナ共和国、ベネズエラ、コロンビア、パナマ、メキシコ南部さらには西インド諸島までの中央アメリカ及び熱帯アメリカに生育し、商業的供給については主にガイアナ共和国、フランス領ギアナ、スリナムからのもの。

樹種名:スネークウッド
樹種 :クワ科
比重 :1.30

比重が示すように非常に硬くて重いw。リグナムバイタとともに、多分世界で最も密度の高い木材と見なされています(比重1.30)。
材の価格が非常に高いため、間違いなく世界でも最も高価な木材の一つであり、割りやすいことからスネークウッドは一般に、ペン、ナイフ柄、玉突きのキュー、象眼などの小間物に利用されています。
かつてバロック弓においては南アジアを産地とするスネークウッドが利用されました。この木材の特徴は、やはりペルナンブーコ材等と比べると、その強度、そして弓材へ加工した後の経年変化による反り戻りの可能性のリスクがあり、従って徐々に使用されることは少なくなりました。今となっては、弓の強度をあまり必要としない「バロック弓用木材」という位置づけになっています。

3)アイアンウッド

樹種名:ウリン
別名 :アイアンウッド or ビリアン
樹種 :クスノキ科
産地 :インドネシア/マレーシア
比重 :9.20~1.04

ウリン材は、ボルネオ・アイアンウッド、ビリアン等と呼ばれている東南アジア原産の非常に硬く重い木材であり、その為に「鉄の木」 と呼ばれる訳です。
また100年腐らない木と言われており、現地では海辺に生息している為、湿気はもちろん海水にも耐久性があるので公共でもウッドデッキ等に大量に使用されています。
但し割れやすい、反りやすい、といった特徴からやはりこれもペルナンブーコには勝てない訳です。

c)技術の発展とともに時代の最先端を行く技術で代用する

じゃあ、最後はコレか・・、ということで何とか代替しようと、昨今はカーボン弓がプロの演奏家にも使われ始めている、って流れを前回もアップしましたが、前段で結構かたってしまったので、この辺りはまた次回ふれましょうかね。

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