【自家薬籠】Felix Ayoの猛烈に鳴りまくるヴァイオリンを愉しむ

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イ・ムジチ合奏団のコンサートマスターとして名を馳せたフェリックス・アーヨ(Felix Ayo, 1933年7月1日 – )。アンサンブルのみならず、ソロでも見事な演奏を繰り広げており、いたって素直な演奏、豊かな音色、クセの無い豊かな歌いまわし、どれをとっても完璧というほか無く、とてつもなく楽器を鳴らしつつ敢えて自分の音に酔わない理知的な演奏に強烈に惹かれる名盤を幾つか残している。

悪魔のトリル/バロック・ソナタ・リサイタル

【収録情報】
ジャン=マリー・ルクレール
Jean-Marie Leclair (1697-1764)

ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ニ長調
Violin Sonata No.3 in D major
1 第1楽章: Un poco andante – Allegro [5:25]
2 第2楽章: Sarabande. Largo [2:31]
3 第3楽章: Tambourin. Presto [2:41]

ヘンリー・エックレス
Henry Eccles (c.1670-c.1742)

ヴァイオリン・ソナタ ト短調
Violin Sonata in G minor
4 第1楽章: Grave [2:43]
5 第2楽章: Courante. Allegro con spirito [2:08]
6 第3楽章: Adagio [2:11]
7 第4楽章: Vivace [1:12]

ジュゼッペ・タルティーニ
Giuseppe Tartini (1692-1770)

ヴァイオリン・ソナタ ト短調《悪魔のトリル》
Violin Sonata in G minor “Il trillo del diavolo”
8 第1楽章: Larghetto affettuoso [4:15]
9 第2楽章: Allegro [2:52]
10 第3楽章: Andante – Allegro [7:14]

マリア・テレジア・フォン・パラディス
Maria Theresia von Paradis (1759-1824)

11 シチリアーノ [3:26]
Sicilienne

ジャン・アントワーヌ・ピアニ・デプラーヌ
Jean Antoine Piani Desplanes (1678-1757)

12 イントラーダ [3:18]
Intrada

フェリックス・アーヨ(ヴァイオリン)
Felix Ayo, violin
エドゥアルド・オガンド(ピアノ)
Eduardo Ogando, piano

録音時期:1974年4月9-18日
録音場所:ローマ、アクソン・スタジオ

音色に対する賞賛の表現のひとつに「磨き上げられた音色」「シルクのような滑らかなトーン」などと言う表現がよく使われる。
Felix Ayoの音色はひとことで言い表せば「猛烈に鳴るヴァイオリン」と言える。
紡ぎだされる音色は磨き上げられたとも言えるし、シルクのように滑らかでもある。それでもなお、ファーストインプレッションはヴァイオリンってここまで鳴るんだ、というくらいに「猛烈に鳴る」である。木の温かみを、温もりを感じられる素直な音色。

その音色を存分に活かして、自家薬籠中の物としているバロックものをまとめた今回のCDとなる。録音のすべてが名演だが、この中でもルクレール、エックレス、タルティーニ、そしてマリア・テレジア・フォン・パラディスが出色の出来栄え。

温かくて太い音色、それでありながら決して野暮ったい訳ではなく、繊細に歌い込むことも出来る。決して力業で解決に至るようなことはせず、曲が持つ力を利用して音楽を構築していく様は巨匠ヴァイオリニストにありがちな「俺様成分」は皆無にて、バロックにおいてはよりいっそう効果的。

それにしてもマリア・テレジア・フォン・パラディスのシチリアーノって神曲ですね。
タルティーニは当然として、ルクレールやエックレスもステキな作曲家と思っていましたが、これは本当に美しい演奏です。

と言うことでまた次回。

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