ヘヴィメタルにまで革命的インスパイアを与えたパガニーニという奇才

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ヘヴィメタルにまで革命的インスパイアを与えたパガニーニという奇才

1980年代中盤にパガニーニの子孫を名乗るマーク・パガニーニ(Vocal)によるドイツのヘヴィメタルバンド「PAGANINI」が結成されたが、そゆことをここで語りたくてこんなタイトル付けたわけではない。ちなみにYoutubeでも検索できるけれど、至って普通の80年代LAメタルちっくな、売れ線ロックです。

さてさて、まずは「哀愁のトロイメライ(原題Fluhlings Sinfonie/春の交響曲)」という、1982年に当時の西ドイツ、東ドイツ合作による映画の冒頭部分を。
これはクララ・シューマンとロベルト・シューマンを軸にした映画で、当時の時代考証含めて出来るだけ忠実に制作されたもの。ちゃんとメンデルスゾーン指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団によって初演されるというシーンも出てくるが、そんなものは今回申し訳ないですがどうでも良いw。

ギドン・クレーメル(Gidon Kremer)の圧倒的な演奏が繰り広げられる訳ですが、彼は映画の劇中ではシューマンと同時代を生きたニコロ・パガニーニを演じています。そのパガニーニの演奏を見てロベルト・シューマンは「ピアノのパガニーニになる!」と決心するシーン。
あれ、これって本当はシューマンじゃなくてフランツ・リストが初恋に破れ沈んでいた21歳の時にパガニーニの演奏を聞いて「ピアノのパガニーニになる!」とインスパイアして超絶技巧を磨いたという逸話じゃなかったっけ?というツッコミ、及びそもそもこの映画時代考証キチッとしているんじゃなかったっけ?というツッコミはここではさておきます。

ポイントはクレーメルのパガニーニの演奏を聴いて現代に生きるギタリストを目指す若者にインスパイアを与えた、というところなのですよ。「幅広く表情豊かなヴィブラート、滝のようになだれ落ちるメロディ・ライン、信じられないようなアルペジオ。卒倒するほどだった」という印象を与えています。

ま、実際この映画のクレーメルを見たのか、はたまた下記映像(クレーメルの髪型から類推するに70年代後半から80年代前半?)は真実のところ分かりませんが。

ちょっと冒頭部分がビデオテープにダメージが有るため、マトモな映像になっていないものの、コレもまた圧倒的な「パガニニアーナ(Paganiniana)」。もともとは、名ヴァイオリニストであるナタン・ミルシティンがパガニーニの「カプリーズ第24番」のをテーマとして7つの変奏となり、「ヴァイオリン協奏曲第1番」第1楽章のフレーズを最終変奏とした7分程度の小品で1954年にアメリカで作曲した無伴奏ヴァイオリンのための曲。
タイトルの「パガニニアーナ」とは「パガニーニあれこれ」という意味があるそうな。

あれ、また話がズレた。。。

1900年代前半からブラックミュージックをベースとしたジャズやブルースは演奏されており、1950年代に生音ではないエレクトリックバンドとしてのブルースが演奏され始めるところにロックギターはルーツをもつと言われています。ここにプレスリーが広めたロックンロール、そしてボブ・ディランらが筆頭のフォークソングビートルズのブリティッシュロックといった変遷を経て発展していきます。
60年代後半に、その後のロックサウンドを決定付けるギターのフィードバックサウンドやエフェクターの一種であるファズが生まれています。それまでは、真空管アンプによるナチュラルに歪んだ音で演奏されていたものが、よりヘヴィな音で表現可能となったワケですね。そこで生まれたジャンルの一つに、ハードなブルースがあり、そこでギターの革命児ジミ・ヘンドリックス(ジミヘン)が現れ、ロックにおける花形、ギタリストにスポットライトが当たるよーになるわけです。彼のプレイは基本はあくまでブルースやR&Bに根差し、これにジャズのコードやスケールを加えたベーシックなプレイではあるものの、ハードな音使いや曲の展開の仕方などが画期的ゆえに脚光を浴びた形になりました。

ジミヘンと同時期に、ジェフ・ベック、エリック・クラプトン、ジミー・ペイジというロック界における世界三大ギタリストが現れるのですが、基本線は同様にリズム&ブルース(R&B)に根差しつつ、次第に、「ブルースをよりロックらしく演奏する」ことに重点を置くようになってきます。これは、ブルースをよりヘヴィで歪んだ(オーヴァードライブさせた)音で演奏すること、とイコールであり、エレクトリックギターのエフェクター類の発展や、大音量の出せるアンプやスピーカー等も、これらの新しいサウンドを支えた訳です。

これがハードロックの歴史なのですな。

エリック・クラプトンのCreamジミー・ペイジのLed Zeppelinと言ったバンドが世界的成功を納め始めた矢先に、さらにスピーディに、あるいはさらにヘヴィに、といったハードロックをプレイするバンドが現れるのは自然の流れ。それがリッチー・ブラックモア率いるDeep Purpleであったり、トニー・アイオミ率いるBlack Sabathなのです。
そしてこれがヘヴィメタルに繋がっていくキッカケになるのであります。

Deep Purpleから「Burn」。演奏は2:30あたりから。
第3期パープルの名曲なんだけどタマホームのイメージが強くなってしまったw。

ところで、このDeep Purpleは一つの画期的な要素として、ジャズに代表されるようなインプロヴァイゼーション(即興演奏)とともにクラシックの要素をハードロックに持ち込んだというのがある。とは言え、基本的にはペンタトニックスケール(メジャースケールから4と7を無くした5音スケール)であり、これもまた基本線はR&Bに根差した音楽と言えるワケですな。4:46~あたりからのギターソロがまさにそれですよね。このあとに5:19~あたりからクラシカルな要素が入りますが。

ここにスウェーデンはストックホルムに、とあるギターキッズが現れます。
その名を、イングヴェイ・マルムスティーンまたはイングヴェイ・ヨハン・マルムスティーン(Yngwie Malmsteen、Yngwie Johan Malmsteen 本名:Lars Johan Yngve Lannerbäck、1963年6月30日生まれ)。ジミ・ヘンドリックスの死に影響を受けてギターを手に取り、リッチー・ブラックモアに心酔したこのギターキッズは(ようやくここで前段の話と絡むのだけれども)クレーメルのパガニーニの演奏に触れて衝撃を受けます。

「しばらくは DEEP PURPLE 等のバンドを真似して演奏していたが、ペンタトニック・スケールや型に填まった調子ばかりで嫌になってきた。その頃のブルーズやロックのギター奏者は皆やっていたけどね。その間ずっと僕がいつも頭の中で聴いていたのは、もっと線的でもっと複雑でもっと「あちら」的な音楽なんだ(=クラシカルなフレーズに根差した、もっと高級な音楽、と言いたいらしいw)。
そして最初にパガニーニの作品を聴いたのは、ソ連のヴァイオリニスト、ギドン・クレーメルがテレビに出たとき。幅広く表情豊かなヴィブラート、滝のようになだれ落ちるメロディ・ライン、信じられないようなアルペジオ。卒倒するほどだったよ。それからパガニーニに関する本をたくさん買って分かったのは、音楽が素晴らしいだけでなく、パガニーニは人間的にも面白いという事だ。本当にワイルドでクレイジーな奴なんだ(友達かよっww)

イングウェイはR&Bに根差したペンタトニックスケールにクラシカルなエッセンスをさらに取り入れ、ハーモニックマイナースケール、メロディックマイナースケールを多用し、かつ圧倒的なスピードによるフレージングによってギターテクニックに革命を起こします。
またパガニーニの演奏でも多用される速弾き、高速アルペジオをギターにも取り入れ(スウィープピッキングやタッピング)、後世のギタリストに猛烈な影響を与えてしまいました
このハーモニックマイナースケールや速弾きは、良くも悪くも強烈な印象を残し「イングウェイ・フォロワー(=イングウェイのモノマネ軍団)」と揶揄される同じ路線のギタリストを大量に輩出する結果となり、またこのフレーズやフィーリングはダークでヘヴィな曲調にマッチしやすいゆえに、ハードロック、ヘヴィメタルにおける基本要素にまでなってしまったのです

Cacophony時代のジェイソン・ベッカー(Jason Becker)によるパガニーニ。
しかしまぁよくぞここまでクリアに弾けるよ。。。

 

同じくCacophony時代のジェイソン・ベッカーのギターソロタイム。右手のピッキング無くても弾けちゃうもんね、という曲芸から始まるw。1:14あたりから名曲「Serana」。圧倒的に上手くて21世紀になっても彼ほどうまいギタリストは出てきていないかもしれない。ALS(筋萎縮性側索硬化症)にて現在は全く身動きすら出来なくなってしまっただけに何とも涙が出てしまう。

 

一時期はイングウェイ・フォロワーと見られていたポール・ギルバート(Paul Gilbert)。その後の活躍により見事にクラシカルな要素を消化して美しいギターをプレイするようになり、イングウェイの影響などこれっぽっちも感じられなくなった。そのポールによるイングウェイのギターソロにおけるスケール解説。

と、まぁこういったところにまで間接的とはいえ影響を与え続けているパガニーニってスゲェな、と思うワケですよ。

ちなみに前出のイングウェイ。お気に入りのヴァイオリニストはイツァーク・パールマンであり、彼の『パガニーニ24のカプリース』がお気に入りなんだそうな。

確かに圧倒的に上手いですよね。

と、まぁここまで話を振っておいてなんですが、個人的には下記のクレーメルによる劇中の『カンタービレ』にちょっぴり感動しちゃってヘビロテ中。

ステキです。クレーメル・・・やればできる子。

ってなところでまた次回。

 

ヘヴィメタルにまで革命的インスパイアを与えたパガニーニという奇才” への1件のコメント

【クラシックの奇才がロックの鬼才を呼ぶ?】パガニーニによるギターバトル | Hyakushiki Violin にコメントする コメントをキャンセル

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