【モヤモヤが実はステキ】ミュートが織りなす天上の音楽

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『ちっこい黒い魔物』

ヴァイオリン演奏において幼少の頃より叩き込まれるのは、美しい音色を豊かな音量と響きを持って奏でること。ホールいっぱいに響き渡る美しい音色を求めて、日々鍛錬を重ねるわけですが、そんな生まれてこの方ウン十年の奏者の響きを思いっきりデッドにするちっこい黒い魔物がおります。

見た目は小さいし無くしやすいし目立たない存在ですが、威力は抜群。
あっという間に鼻の詰まったような、モヤモヤトーンに変えてしまいます。
はじめてミュートの指示を受けて弾いたとき、なんだこりゃ、あの日々の積み重ねを返してくれ・・・そう思ったのを今でも忘れません。

 

『ミュートって何のために?』

Wikipediaによると下記記載があります。

ヴァイオリン属の楽器の弱音器は、駒に取り付けられる。用途によって2つのものがある。

弱音器(ミュート、ソルディーノ)
作曲者の指示により装着する。これを取り付けると駒の振動が吸収され、音が弱まり音色が和らぐ。ただし絶対的な音量を落とすよりも、音色上の要求により指定されることが多い。木製、ゴム製、金属製などがあり、形も様々であるが、音楽的にそれらの種類を使い分けることはなく、演奏者の好みや付け外しの便によって選ばれる。弱音器の装着を最初に指定したのは、リュリ(1632-1687)のオペラ「アルミード」(1686年)だと言われる(リュリによる弱音器装着の指示については、実際には少なくとも1681年の「アムールの勝利」に既に見られる)。バルトークの弦楽四重奏曲第4番第2楽章は「コン・ソルディーノ」と記され、全編にわたって弱音器付きで演奏される。独奏楽器が弱音器を装着する曲はあまりないが、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲第2楽章「カンツォネッタ」や、「ツィゴイネルワイゼン」の中間部などが有名である。

消音器
練習用に、楽器の響きを押さえ音量を落とすために用いる器具は消音器と呼ばれ、演奏に用いる弱音器とは通常別物である。金属製、または駒の上辺をおおう大きなゴム製のものなどがある。音量を落とす目的は深夜の練習の際など周辺に配慮するためが多いが、ユーディ・メニューインは消音器を付けた練習を「演奏を肌で感じ、音の性格に精神を集中させることができる」効用があると推奨していた。

~Wikipedia“弱音器”より~

この鼻の詰まったような音色が求められてるの?って思うこともしばしば。

コチラの動画で具体的な説明がなされています。
ミュートによる音の違いは1:00過ぎから。弱音器(これは先ほど張り付けたゴム製ミュートとは異なり、ワイヤー式のミュート「Roth-Sihon(ロートシフォン)」と言います)と消音器の音の違い。

消音器は完全に音を殺すためのモノなので、それはそれとして意味があるのですが(練習用として)、弱音器はまるでエレキギターでいうところのワウペダルの半開きトーンみたい。ヴァイオリンでこの弱音器を用いるとメロウ(柔らかく豊か)、静謐な音色が得られる、とされています。

 

『ヴァイオリン単体では意味がない』

弱音器を付けたヴァイオリン無伴奏が存在しないように、この弱音器は周りのサポートが有って初めてその威力を発揮します。チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲第2楽章は全編弱音器を付けたソロがオケをバックに物悲しく、苦しく歌うからこそ意味が有るのであり、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界」の第2楽章では弦楽全体が弱音器を用いることで柔らかな、それでいて遠い追憶の世界を表現している訳です。

チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品35 第2楽章
(Tchaikovsky Violin Concerto in D Major, Op. 35, 2nd movement)

 

ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」第2楽章
(Antonín Leopold Dvořák Symphony No.9「From New World」2nd movement)

 

『そんなミュートが織りなす天上の音楽』

どれもステキではありますが、おそらくクラシック史上最高に美しいミュートが織りなす音楽は、天才モーツァルトが友人アントン・シュタードラーのために作曲したクラリネット五重奏曲 イ長調 K.581の第2楽章にあると思っています。


コチラはベルリンフィルの首席を務めたカール・ライスターのソロによるクラリネット5重奏。バックをベルリン・ゾリスデンのメンバーが務める美しい演奏。

このヴァイオリンはホントに美しいなぁ・・・。

と言うことでまた次回。

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