【木材図鑑】弓に使われる前は染料だったペルナンブーコ(Pernambuco)

Pocket

ここ最近のカナリア軍団(セレソン)は超強いらしいですね。
チッチ(アデノール・レオナルド・バッチ監督)が前任のドゥンガ監督から引き継いで以降、チームを立て直して破竹の勢い、ネイマールを初めとしたマルセロ、フェルナンジーニョ、カゼミロなどの主要メンバーとして名を連ねるスター選手たちに加え、サイドから中央を切り崩していくスタイルと、4-3-3のフォーメーションに思いっきりマッチしたセレソン最年少FWガブリエウ・ジェズスが「ジョイア・ラーラ(類稀な宝石)」、「フェノメノ」(異常現象)といったアダ名に負けない活躍を見せていて、見ていて楽しい攻撃的サッカーながら、これまた世界的ディフェンダーであるダニエウ・アウベスとチアゴ・シウヴァは年齢的な円熟を迎えてもいる一方で、前回のW杯ではボロ負けして荒れていたマルセロが世界最高峰のサイドバックとして台頭しているというスゴイ組み合わせ。
ブラジル最強説はしばらく変わらなそう。

そういや何でブラジルセレソンがカナリア軍団と言われるかというと、もちろん国旗の色である黄色のユニフォームからそう呼ばれるようになった、というのは想定の範囲内。
これ以外にも1950年までは白のユニフォームだったのですが、ウルグアイ戦で逆転負けを喫し、あまりのショックに観客が心臓麻痺などで4人も死亡(これショック死というより会場が荒れて巻き込まれて亡くなったんじゃないかと思うけど・・・)、この惨劇を忘れるためにユニフォームを黄色にしたと言うのです。
なお、そのカナリア軍団の心のよりどころ、ブラジル国旗は、元来緑色と黄色はそれぞれブラジル皇帝であるペドロ1世のブラガンサ家とその皇妃マリア・レオポルディナのハプスブルク家を象徴していたそうですが、現在では非公式ながら緑色は森林を、黄色は金と鉱物資源を象徴していると解釈されることが多いそうですな。

なるほどー。
黄色と緑にはそんな意味があったのか・・・。と思いながらも『ブラジル』って意味は「燃えるように赤い」なんですよね。

国号のブラジルは、樹木のパウ・ブラジルに由来してまして。


もともとブラジルに入植してきたポルトガル人が、この地方でヨーロッパで染料に用いられていたインド原産のスオウ(ポルトガル語でブラジル)と言う木に似たものを発見すると、それもまた同様に染料に使われていたことから、染料用の木をポルトガル語で赤い木を意味する「ブラジル」と呼ぶようになり、ブラジルの木のポルトガルへの輸出が盛んになったこともあり、16世紀中にこの地はブラジルと呼ばれるようになったそうなんですね。

んでもって、このパウ・ブラジルの木の心材(芯材)から紅色色素(ブラジリン)が得られる、って寸法です。これを染料とする為に大量に輸出されていましたが化学染料の登場によって廃れてしまいました。

確かに写真を見てみると、赤い芯材と、染料にて色付けされた毛糸が見て取れます。

このパウ・ブラジルの輸出港として大きく栄えたのが今のペルナンブーコ州(Estado de Pernambuco)周辺なんですね。
ペルナンブーコ州は、ブラジル北東部の州で、ポルトガル植民地時代のカピタン領を起源とする、ブラジルで最も歴史のある地域なんですね。州都レシフェ都市圏は人口約350万人を擁し、ブラジルで5位、世界でも有数の人口密集地帯となっています。


ここで採れるパウ・ブラジルが通称「ペルナンブーコ」「フェルナンブーコ」・・・いろいろ発音によって呼び名は微妙に異なりますが、英語商用名では「Pernambuco」と書くので、ここでは「ペルナンブーコ」で統一します。

ペルナンブーコはマメ科の植物、正式な学名はGuilandina echinata Spreng. または Caesalpinia echinata Lam.です。上述の通り心材部分の色は橙色から赤色で、水で簡単に抽出される色素成分(ブラジリン)をたくさん含んでいます。
染料を取るために伐採されていたこのペルナンブーコを、バロックボウからモダンボウへと変遷、発展させた、まさに「生みの親」といわれているフランソワ・トルテ(1747〜1835)が弓材として初めてペルナンブーコを使い、それ以降、ペルナンブーコは最高級の弓材として長きにわたり珍重され続け、現在に至っています。

この木材の特徴は、とても曲げ強度に対して強いということ、また熱によって反りが付けやすく、そしてその反りが戻りにくい、という弓の基本性能に加えて、この「ブラジリン」が物凄い大きな役割を果たしているのです。
即ち、この色素が木材中にあると振動が減衰しにくく、長時間響き続けるという効果があるんですね。つまり生じた振動が弓材に吸収されることなく、弦からバイオリン本体へと有効に伝えることができる、と言う訳。

これによって過度の伐採により絶滅の恐れがあるため、IUCNに絶滅危惧種として登録されてしまったり、また2007年6月にハーグで開かれたワシントン条約締約国会議においてペルナンブーコを含むブラジルボクは同条約附属書IIに記載されることになってしまいました。

この辺りはまた次回。

【木材図鑑】弓に使われる前は染料だったペルナンブーコ(Pernambuco)” への4件のコメント

  1. […] → 【木材図鑑】弓に使われる前は染料だったペルナンブーコ(Pernambuco) […]

  2. […] → 【木材図鑑】弓に使われる前は染料だったペルナンブーコ(Pernambuco) […]

  3. […] → 【木材図鑑】弓に使われる前は染料だったペルナンブーコ(Pernambuco) → 【木材図鑑】切られまくったペルナンブーコ(Pernambuco) […]

  4. […] → 【木材図鑑】弓に使われる前は染料だったペルナンブーコ(Pernambuco) → 【木材図鑑】切られまくったペルナンブーコ(Pernambuco) → 【木材図鑑】ペルナンブーコ(Pernambuco)の代替になりえる候補たち […]

【木材図鑑】切られまくったフェルナンブーコ(Pernambuco) | Hyakushiki Violin へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。