【新しいヴァイオリン教本】第3巻 ~パッチーニの主題によるエア・バリエ Op.89-1~

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『パッチーニの主題によるエア・バリエ Op.89-1』by C. Dancla

ダンクラ、って誰?というところから入らざるを得ない、初学者にとってはナゾの作曲家現る。という感じになってしまうこの曲。というよりこの作曲家。
進んでいくとダンクラさん(ここでは親しみを込めて段倉さんとする)は幾度となく登場します。段倉氏は生まれがフランスのヴァイオリニストにして学生用の(勉強用の)ヴァイオリン小品を幾つか遺したことで名を知られています。それがこのエア・バリエシリーズなのです。

①6 Airs Variés, Series I, Op. 89: No. 1, Thème de Pacini
②6 Airs Variés, Series I, Op. 89: No. 2, Thème de Rossini
③6 Airs Variés, Series I, Op. 89: No. 3, Thème de Bellini
④6 Airs Variés, Series I, Op. 89: No. 4, Thème de Donizetti
⑤6 Airs Variés, Series I, Op. 89: No. 5, Thème de Weigl
⑥6 Airs Variés, Series I, Op. 89: No. 6, Thème de Mercadante

段倉氏はこのほかにもベルリーニの主題を用いたエア・バリエ(Op.118)を残しており、この様々な楽曲をおいおい経験していくことになります。このどれもが「ん?」という拍感、歌い込みを必要とする部分があり、これが難しかったりします(淡々と進むテンポ感ではなくて、ぐーっと伸ばして歌い込むところなど)。

この段倉氏、このままいくとホントに段倉氏になってしまうので、正式名称はC. Danclaとはシャルル・ダンクラ(Charles Jean Baptiste Dancla)というフランス生まれのヴァイオリニスト・作曲家をさします。生没は1817年~1907年とありますから、同世代ではシューマンやベルリオーズと同世代ですね(大分ご長寿様ですが)。
9歳でピエール・ロード(日本ではローデで知られる)にヴァイオリンを師事。ロードはダンクラの才能に感銘を受けて、推薦状を持たせてピエール・バイヨやルイジ・ケルビーニ、ロドルフ・クロイツェルに紹介しています。
ちなみに、ピエール・ロード、ピエール・バイヨ及びロドルフ・クロイツェルは共著でヴァイオリン奏法の教則本を執筆しており、この3人は、フランス・ヴァイオリン楽派の基礎を作った『聖三位一体』と見なされていて、つまるところフランスヴァイオリン界の創始者ともいえる存在に師事したことになります。
ダンクラはパリ音楽院でバイヨにヴァイオリンを、作曲をフロマンタル・アレヴィに師事しており、1830年にニコロ・パガニーニをの演奏に触れてインスピレーションを受け、さらにアンリ・ヴュータンにも同じように影響されて、18歳よりソリストとして、そしていくつかのコンサートマスターも務めながら、1857年に母校パリ音楽院の教授に任命され、それから35年にわたって教師を務めた、という経歴の持ち主。

パッチーニとはイタリアのオペラ作曲家、ジョヴァンニ・パチーニ(Giovanni Pacini、1796年-1867年)を指しており、同時代にジョキアーノ・ロッシーニ、ひと世代あとにジュセッペ・ヴェルディという間に挟まれ忘れ去られてしまった作曲家であり、また同世代のドニゼッティ、ベルリーニといった作曲家の方が名声において上回ってはいるけれども、様々なスタイルの変化(『管弦楽法は重厚になり、コロラトゥーラは特に男声では削減され、感情豊かな情念により重きが置かれた。例外も存在したものの、ロマン的な立役者はテノールに割り振られた(ロッシーニの時代には、そうした役柄は多くの場合アルトやメゾソプラノの女性が担った)。悪役はバス、その後バリトンが受け持った(ロッシーニの時代はテノールであることが多かった)by wikipedia)において影響を与えた作曲家として今日は知られています。

とはいえ、このダンクラが採用したメロディがパッチーニのどのオペラから採ったものか不明ですが、入り込みやすいテンポで比較的弾きやすい部類に入るのではないかと思います。

ま、そんな感じでまた次回。

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