こんなオーケストラがあったらいいな⑥ ~『UEFA(チャンピオンズリーグ)編』

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こんなオーケストラがあったらいいな ~『UEFA(チャンピオンズリーグ)編』

『死のブロック』

プロの音楽家になるためには、途轍もない膨大な時間を掛けて、人生を賭けて、いろんな局面で勝負して生き残った一握りがステージに立つ、ってのがよくある理解。
主観で判断されてしまうからこそ、ハクを付けて勢いに乗るために、様々なコンペティション(コンクール)が開催され、そこで勝ち抜いていく。
オーディションなんかもその類(たぐい)。まだコンクールは順位が有るけれど、オーディションに至ってはオンリーワン、もしくは主催者が気に入らなければ「該当者なし」の厳しい世界。完全無欠の競争社会、サッカーでいうなら予選における死のブロックみたいなものなのです。

 

『ところがどっこい決勝戦は順位がない?』

ある一定レベルを超えたプレーヤー、オーケストラになると判断基準が無くなってしまい、順位付けが出来なくなるのですね。よく言えば、演奏者から芸術家になる、ということ。
例えばクレーメルとパールマンはどっちが凄いですか?なんて最早答えられないよ、みたいなもんです。なぜならもうそこには好き嫌いの主観判断以外で何も言えないから。

ま、それは一理あります。
順位づけすべきではない、という主張、主義の論理はそこにあります。
あるものを表現する表現者となってしまった芸術家において、例えばピカソの絵に対して「デッサンの正確性においてヘタクソ」という評価は間違っているでしょ、という理屈。すなわち表現しようとしているものを測る尺度がない、ってやつです。

 

『それでもどっこい人は順位付けをしたがる』

とか言いながら、クラシックの世界では例えば好き嫌いランキングでオーケストラを順位付けしたりします。

例えばCNN i Reportによるとこんなランキングが2015年に発表されています。
http://ireport.cnn.com/docs/DOC-1225648

1位 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
2位 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
3位 ニューヨークフィルハーモニック管弦楽団
4位 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
5位 ロンドン交響楽団
6位 ドレスデン国立管弦楽団(シュターツカペレ)
7位 ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
8位 サンクトペテルブルグ管弦楽団
4位 チェコフィルハーモニー管弦楽団
10位 Tokyo Philharmonic Orchestra(Japan)・・・どっちやw。

10位は東フィルなのか都響なのか良く分かりませんがw。

かと思いきや、日本が誇るクラシック専門誌レコ芸こと『レコード芸術』ではこんなランキングを発表しています。

【2017年発表】
1位 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
2位 バイエルン放送交響楽団
3位 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
4位 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
5位 ドレスデン国立管弦楽団(シュターツカペレ)
6位 パリ管弦楽団
7位 シカゴ交響楽団
8位 ロンドン交響楽団
9位 マーラー室内管弦楽団
10位 ドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメン
11位 ベルリン国立管弦楽団(シュターツカペレ)
12位 ボストン交響楽団

ちなみに、1993年と2008年にも『レコ芸』はランキングを作っています。
【1993年】
1位 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
2位 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
3位 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
4位 シカゴ交響楽団
5位 クリーヴランド管弦楽団
6位 モントリオール交響楽団
7位 パリ管弦楽団
8位 18世紀オーケストラ(オランダ/ブリュッヘン主催の古楽オケ)
9位 ドレスデン国立管弦楽団(シュターツカペレ)
10位 バイエルン放送交響楽団

 

【2008年】
1位 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
2位 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
3位 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
4位 バイエルン放送交響楽団
5位 シカゴ交響楽団
6位 ドレスデン国立管弦楽団(シュターツカペレ)
7位 ロンドン交響楽団
8位 ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
9位 ベルリン国立管弦楽団(シュターツカペレ)
10位 パリ管弦楽団

んで、まぁ何なのよコレ?というのはそれぞれの評価者の得点でランキングされる結果がこれでした、っていう話ですね。上述のCNNでも結果そうなのでしょう。きっと。

 

『結局判断基準って評論家任せ』

クラシック音楽の世界は評論家の先生がたくさんいらっしゃいます。
批評家、とも言われますが、軽薄な方はお昼のワイドショーのコメンテーターみたいなもんであったり、含蓄がある真の評論家もいたりするので、コレが難しい。

古くは、ワーグナーを批判しまくったエドゥアルト・ハンスリックシカゴトリビューンでシカゴ交響楽団をボロクソにしていたクラウディア・キャシディといった批評専門家もいれば、作曲家のロベルト・シューマン、フーゴ・ヴォルフ、指揮者でピアニストのハンス・フォン・ビューローあたりもそのコメントが作曲家の成功を左右するくらいの評論家として知られています。
日本で言うなら、代表的なところで吉田秀和、宇野功芳、金子建志、許光俊に諸石幸生とキリがないくらい。

「結局よく分かんないから評論家のコメントを参考にしよう」「含蓄のある言葉を聞くと、なるほど、そうだね、という気分になる」的な発想が根本にはあると思います。それはそれでよいのです。評論家は評論してメシを食っているのですから。

でも、ホントのホントはお客さんがランキング付けたものが「その時」の最も正しいランキングである、とも言えませんかねぇ、と思うのですよ。

 

『感情をおカネに変える技術』

昨今IoTの発展とともに、メチャクチャ面白いアイデアでビジネスモデルを構築する試みが幾つかあります。中でも話題になったのが、2013年に減収に悩まされていたスペイン・バルセロナのお笑い劇場「Teatreneu」において、業績回復の手段として「入場無料」「笑った分だけ料金を払う」という従量課金制を打ち出した!というニュース。顔認証センサーを駆使したIoTを活用することで、座席の前に備え付けられたタブレット端末で観客の笑顔を認識し、一度笑うごとに30セントが課金されるというスキームで、かつ最大24ユーロのキャップが決まっているため、観客は思う存分に公演を楽しめる安心設計。すなわち「ペイパービュー/Pay-Per-View(PPV)」というか「ペイパーラフ/Pay-Per-Laugh」と呼ばれる不思議な課金モデルを実現した・・・というネタ。

コレが判断基準になるのでは?と思うのです。
感動をすれば驚嘆し、涙を流し、公演が終われば拍手とブラボーの嵐。
興奮すれば血流と体温が高まるし、眠ければスヤスヤと眠りに落ちる。
興奮の量だけが判断基準ではなく、落ち着いてリラックスした中でいかに人間が快適さを感じるか、という脳波をチェックして定量化していく、こういった技術が導入されたらどうなんでしょう?

アートはそんな尺度、物差しじゃ測れない、という声もあるでしょうけれど。

瞬間の舞台芸術でもあるのであれば、お客さんの心を動かしてナンボ、と思うのです。

 

『UEFAチャンピオンズリーグ』

話はいきなり飛びましてw、UEFAチャンピオンズリーグ(英: UEFA Champions League)。ご存知ですか?
欧州サッカー連盟(UEFA)が主催する世界最高峰のサッカー大会で、毎年9月から翌年の5月にかけて行われる、各国のサッカークラブチームによるサッカーの大陸選手権大会という形をとっています。

平たく言うと、世界中のサッカークラブの世界一を決めようぜ、というもの。

もともとはヨーロッパNo.1を決めようぜ、という趣旨だったのですが(今でもそうだけど)。事実上世界一を決める大会になってます。

<参加資格>
(1)UEFAランキング1位〜3位国の上位4クラブ
(2)UEFAランキング4位〜6位国の上位3クラブ
(3)UEFAランキング7位〜15位国の上位2クラブ
(4)UEFAランキング16位以下国の1位クラブ
(5)前年度UEFAチャンピオンズリーグ優勝クラブ
(6)前年度UEFAヨーロッパリーグ優勝クラブ

<リーグ内容>
グループリーグは32クラブを4クラブ×8グループに分ける。ホーム・アンド・アウェー方式の2回総当りで争い、各組2位までの16チームが決勝トーナメントに進む。

この仕組み、面白いと思いません?
そしてこれを例えばオーケストラに横展開したらどうなるんでしょうか?

つまり、UEFAチャンピオンズリーグのように、『各国最強のオーケストラが世界一を競う!』というスキームで評論家ではなくお客さんにランキングを付けてもらう、ってことなんですよね。

 

『最強ってつおいの?』

最強、ってなんだ?と言う冷静なツッコミはさておき、上述のIoT技術が代替するのはプロの評論家に拠らない、プロではではない大衆に評論を委ねるという事
ホーム&アウェイ方式で各4オーケストラからなるブロックを勝ち抜いたオーケストラに決勝リーグ進出。優勝オーケストラには賞金と放映権からの収入山分けがついてくる!的なw。

こういう大衆が判定するランキングが、プロの判定するランキングと異ならないことを祈りますがw、裾野を広げて楽しむための興行として、ひとついかがでしょうか。
IoTの発展に伴って、感動を数値化してランキングする、っていうニュースだけでもものすごい流入を起こしそうな気がしますし、これに対応するために業界が発展するのはとても良いと思うのです。波風、立てましょうよw。

 

『最強を奏でるアンセム』

ちなみに、アカデミー室内管弦楽団(Academy of St. Martin-in-the-Fields)は、イギリスのオーケストラ。略称は(ジ・)アカデミー(The Academy)。かつては室内編成のオーケストラで、17世紀から18世紀の音楽を専門にしてきた団体ですが、古楽器オーケストラの台頭や、標準編成のモダン楽器のオーケストラが古楽奏法を取り入れる中で、編成とレパートリーを拡張して独自の路線を歩み続けている団体で、サ・ネヴィル・マリナー指揮で知られています。ここの附属の合唱団(Chorus of St. Martin-in-the-Fields)がUEFAチャンピオンズリーグのアンセムを歌っています。

「UEFA Champions League Anthem」
合唱:Academy of St Martin in the Fields
オケ:Royal Philharmonic Orchestra
編曲:Tony Britten
作曲:Georg Frideric Handel’s “Zadok the Priest”

『Champions League Theme』

Ce sont les meilleures équipes
Es sind die allerbesten Mannschaften
The main event

Die Meister
Die Besten
Les grandes équipes
The champions

Une grande réunion
Eine große sportliche Veranstaltung
The main event

Ils sont les meilleurs
Sie sind die Besten
These are the champions

Die Meister
Die Besten
Les grandes équipes
The champions

Die Meister
Die Besten
Les grandes équipes
The champions

イヤがおうにも盛り上がるこのアンセム。
ヘンデルなんですね・・・。これ、上の方で書いた採点方式でやったら世界一になれたりして。なんちゃって。

ってことでまた次回。

こんなオーケストラがあったらいいな⑥ ~『UEFA(チャンピオンズリーグ)編』” への1件のコメント

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こんなオーケストラがあったらいいな⑦ ~『リアルレジェンドオーケストラ編』 | Hyakushiki Violin へ返信する コメントをキャンセル

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